2017知床

イトウと岩魚2足のわらじ

更新履歴 北海道のイトウと岩魚 北海道のイトウ 北海道の岩魚 書籍・文献紹介
人物紹介 両生類その他 沢登り・冒険 意見感想 プロフィール

2017年8月、知床相泊の海岸。シュマールは自宅でお留守番です・・・

友人A氏とここへ来たのが2013年を後に2014年は身近で不幸があったので中止、15〜16年は単独で簡単な旅で終わり今年2017年も単独の場合は中止しようと考えていた。極端なことを言えば知床への想いもここまでにして忘れようか?なんて、できもしないことをふと思いつつお盆時期でこの地と同等か価値観の違いで満足できる旅ができるなら違う場所で北海道最後の夏を過ごしてもいいかな?と考えていた。・・・そんなことを考えていた7月上旬、A氏からメールがきた。自宅から目的地までの移動を行き帰りの2日間と現地で3日間過ごすのに、いつものお盆時期に何処かへ行かないかという提案で作戦会議を市内の居酒屋で開いたものの結局、知床しか思い付かなかった。因みに’シレトコ’と定める自然領域は羅臼側は相泊〜岬先端、宇登呂側ではプユニ岬〜先端にかける領域に魅力的な核心がある。それ以南は単なる観光地です・・・

計画では到着後、相泊から夫婦滝へ向かい2泊3日の間で思う存分カラフトマス釣りをする考えでいた。前日の夕方に私が先に着いた段階では風が穏やか波もまったく無い状況から翌日の朝当日は一転しおよそ波高2.5m?沖合には白波が立ち南東の風が吹いた。

ここまで片道12時間をかけやって来る心身の疲れはどんなに自身の気持ちを盛り上げようにも歳には逆らえない。am6時過ぎ相泊で合流して沖合の白波を眺めながらこりゃあ〜無理だねとA氏の気持ちを確認し、では宇登呂側は波風ともに穏やかだからそこで様子をみようということにした。こちら側の海岸からカヤックを出す場合、車をデポする場所が限られ有料で運営しているキャンプ場のスペースに問い合わせると毎年、決まった常連客で予約が埋まっており話にならない。海浜地が私有地?になるとは考え難い?があとは町の雪投げ捨て場となる僅かな場しかなく、たまたまお盆直前だったせいか空スペースがあり車2台を駐車でき波打ち際から沖合を見渡すとベタ凪だ。いろいろ考え天気予報をスマホで繰り返し確認するも知床先端領域の精確な予報は得られない。とりあえず海を眺めこれから数日間をどう過ごすかそれぞれ考えていると目前に定置網が仕掛けられている辺りでカラフトマスがもじっているのが度々目に映り釣りを始めるとA氏がヒットさせるが痛恨にもばらしてしまう。上記の画像はその後海岸で昼寝をしている風景・・・

モイレウシにて。テントのフライシートを開け顔を出すと距離にして3mかなという目前にクマがいた。おいっ!と声を荒げ追い払うと小走りに逃げ去り謙虚なことにわざわざ背後を周って迂回してくれた若い羆・・・クマと会ってもドキドキしなくなってきたがウトロ側で姿を見せるのは3倍以上はあるデカいやつだけに、その分緊張感が倍増する。テントは’ヒマラヤでもウラヤマでもアライテント’と謳う国産のもの。フライシートの色はオレンジとグリーンの二種類があってグリーンを選択したのは良いがベースを張ったキャンプ地の背景と重ねて見ると迷彩色になっているのか?クマに我らの存在感を知らしめなかった。

波高2.0mほどの海岸を相泊から2時間半ほど漕いでモイレウシに指しかかった領域でそれ以上の波高と強風になり目的地である通称=滝の下までは面倒?だと判断しモイレウシの湾を目指すと距離にしてどれくらいだろうか700m〜2kmといった漠然とした距離感にあたる辺りにカラフルな色合いの物体が波打ち際で蠢いているのはシーカヤックの軍団として目に映った。

ここ知床で年間を通しシーカヤックで半島を周回するツアーを企画する”新谷”さん=第一人者=パイオニアなる団体で大きく湾曲した湾の風消し際で足踏みしているようで強風に逆らい体を慣らしているいるように見えた。特に繁忙時期である真夏、お盆時期にここ知床でシーカヤックで旅する個人は回数を重ねるごとに新谷さんと出会う機会は避けられない。私の名前を告げることも聞かれることもないし顔も見覚えがあるかも定かではないだろうが、それなりにここ知床で多くの旅人たちと出会っているはずだ。それでもただただそこで会う者たちにメディア目線≠ナ応対することもせずに気さくに言葉を交わしてくれる。率直に2017年のシレトコで実感したのは年齢を重ねる都度に体力が衰えていく問題でしょうか、体力が衰えていくと気力も衰え活力が失せてきます。更に単独となれば自己防衛本能が過度に働き無理ができなくなることを、ここ知床で我が身をもって痛感させられる。

目前に窺えるのは’剣岩’だと思う。相泊から追い風でありながらモイレウシの南側に位置する湾に上陸する。

低温注意報が発せられているだけあって渡し船でやって来た釣り人たちはam9:00までを目途にひたすらカラフトマスを狙うはずが多くの人たちは余りにも釣れず、あまりにも寒く番屋側に位置する北側の湾で風を避け退避していた。聞くところによると今年はマスの回帰はすこぶる少なく期待できないようで、たかだかポイントでの釣り時間が3時間で船渡し料1万3000円が高い?安いかは2017年での相場で地元スーパーで一匹2000円あたりで売られている価値と比べると皆さんが求める価値感を問うて頂きたいものでしょう・・・

あともう一つ、上陸して30分ほどの間、左手の中指、薬指の2本がまったく感覚がなく血が通っていないようで爪も真っ白で、その指をいくら動かしても一向に回復しそうにない。あれ?変だなあ?初めての経験で、まるで怪死した肉片のように血の気がひいて白くなった指を見るA氏が心配し、もしやばいようだったら湯を沸かし手を温めようか?と打診するほど危険な状況だった・・・その2本の指を除けば体はいたって何の寒さも感じられない。その後、30分ほど海岸を歩き回り腕を振り回しても一向に回復する兆しが見込めず最初に上陸した地点、幸いにして新谷さんのツアーが残置していた焚火跡、既に鎮火していた流木はまだ温かく、おまけに周りには幾つか集められた枯れ木が残されていたおかげで有り難く再燃させてもらい燃え上がった流木の根元に血の気が引いた薬指と中指を何度も擦り合わせて十数分後、根本の指から徐々に赤身が通いだし痺れという感覚が少しずつ感じだし回復した。

20代の頃、日高の山中で低体温症を経験したが、ここでこの歳になってこんな状況に見舞われるとは想像もしなかった。洋上でパドルを動かしている中はよかったが真夏の北海道、知床でこんな体験をするとは予想できなかった。近代社会で暮らす私たち人間の体も機械であることを自然の摂理から改めて厳しい現実を教えられた・・・