湧き淵の岩魚郷

イトウと岩魚2足のわらじ

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北海道のイトウと岩魚
北海道の岩魚
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7月に入り最初の雨後の増水を狙い海から遡上した岩魚、降雨量が少ない影響はこの渓にも渇水を及ぼし、瀬と淵を繰返す浅瀬部分では完全に干上がったところも見られ、各所の淵を中流から源流にかけ丹念に覗くと山女魚、残留の岩魚にウグイ、アユがいた。そこでとりわけ一番深く暗い岸壁に囲まれた流れの両脇、その壁面に数多く開けられる穴や底からは湧き水が噴出し、既に産卵を終えたもの、これから始めるもの十数匹が体を寄せ合っていた。

岩魚の環境に対する適応力、その順応性の凄さを痛感するのは、一般的に産卵は9月〜10月下旬にかけて行われるのも、水量次第ではその変化に素早く対応し事済ませていることです。サケやサクラマスの産卵は北から順に早く行われるんですが、この岩魚は単に緯度や経度で始められるものじゃないのが面白いところですねえ。

そして、岩魚に対する注目度の高さも、日本規模とでも言いましょうか、全国規模でお便りが寄せられるのもこれに限り、残留個体群(居付き)の大岩魚に対する思い入れにしても拘りが強く、北海道は雨鱒で岩魚じゃないとか、生息環境も山の標高と規模、険しさも比べようがないほどダイナミックであること、これは羆の存在という抑止力がなければ確かにこれだけの巨大は見れなかったでしょうね。

80gのザックに寝具から着替えを先に押し込み、新たに購入したテント、レトルト食料に米と鍋、500mgビール12缶、ガスボンベ、水中機材、ドライスーツと熊スプレー、予備のカメラを首にぶら下げ、最後に2gペットボトルを専用箇所に差し入れ、よいしょっ!あれ?随分重いなあ、さすがに1人で全ての荷物を持つと体に応える。なんと言ってもカメラ機材だけで半分以上の重さがあるので、何か一つ外すとなれば、同じ大きさと重さになるサブストロボだけ、でもこれも大事だなあ〜・・・

そんなことをするのも、冬にバルクアップした体重84`から5月からの一ヶ月間で67`まで贅肉を落としたので随分と体が軽く感じられ、勢い付いてあれもこれもと・・・

右画像のポイント、ここ一箇所だけにもの凄い力が感じられた。沢山の水が一点に集中して流れ着き、地形状も谷間を吹き通る空気も複雑な動きをしていて、そこに多くの生き物達が集まると力が充満するのか。入渓してから翌日、ここに入ったんですが、岩魚の数と大きさは勿論、随所の隙間から湧き出る水脈が豊富で、壁面の亀裂からは滾々と水が溢れ出し、何とも言えない空気が漂っていた。

札幌で計画した谷は、当初、ここではなく更に南下した渓を予定してたのも、目的地へ向かう途中、通り過ぎる幾つもの川を見て、水量、水色、山頂から吹き込まれるそよ風を感じると、ふと思い立つ谷がある。これはいつもの事で、GPSデータ、地形図の準備も計画地だけのぶんしか用意しておらず、それに関わらず衝動的に現地変更することはよくある。

もう行く所が無い?という訳じゃなく魅力的な所が少ない、特に原生が保たれるところとなれば限られる。岩魚の主点数、婚姻色の色合い、精悍な面構えに尾鰭の大きさ、一番重要なのはカメラを持って接近することができるか?これは時期や川の規模でも変わってくるので、わざわざ重たい荷物を背負い数日間じっくりと泊まりで入れるだけの豊富な要件が凝縮されていないと、どうもその気にはなれない。

近年は異常気象だけでなく盛んに行われる開発行為、トンネル、道路事業、森林伐採、開墾の繰り返しで自然が残される面積が減るなどで、市街地でも羆の出没が目立ってきています。一応、1人で山へ入る時はラジオを携帯し、昼夜、音を出していますが恐怖心と危機感だけは山に限らず下界でも忘れたくないものです。

一番右側のもので、およそ40aほど。ちょっと分かりづらい画面に写るだけでも6匹が岩の間にひしめき合っている。まあこれはマス、アメマスですね!

幸運なことに長引く渇水のせいか、ここで見られた多くは元気が無く、近寄ってもまったく逃げないのが不思議だった。この中で最も大きいのは雌で、多分80以上はあると思います。簡単にそんな数字が述べられるのも、ここが北海道だからでしょうか、こことは他ですが今のところ一番大きな岩魚が見れたのは90ほど。

ナタノコで一生懸命、流木を切り揃えたんですが、何故か全て濡れていて全く火が付かなかった。テントを持っていて正解でした。水に浸かりっぱなしで”ぶるぶる”震えつつビールを飲み、携帯ラジオで野球中継を聞く時間も瞬く間に過ぎ去る。テン場、目前の瀬では日没寸前まで賑やかに岩魚がライズを繰返し、木々の彼方からはクマゲラが口ばしを打ち付ける音が聞こえてくる。そんな初日の晩は満点の星空!

この時は良いデータ撮りができたと思います。フィルムカメラを散々長年やってきた人達に限って、もうフィルムには戻らない?と言いますが、デジタルでも何でも機材に金を投じれば良い一枚が撮れる?金次第だと思っている人も居ると思いますが、技術自体は自宅だろうが人物、風景なりを何処でも写せるもので、それこそ腕を磨けるものだと思います。でも自分としては誰でも簡単に行ける、見れる場所なりの被写体を写す気が全くなく、特に陸上で使う気は薄いです。黒部の幻の滝を写す為に命懸けで臨む人が居ることを思えば、機材も大事だろうけど、フィールドの選択は重要でしょうね・・・

上記の画像、沢山の岩魚が岩の隙間に身を休める?中の一匹で、産卵直後に的を絞ると意外なチャンスに遭遇できる。しかし、そこまで行くには遠〜い〜