回帰録2007-3

イトウと岩魚2足のわらじ

更新履歴
北海道のイトウと岩魚
北海道のイトウ
人物紹介
書籍 文献紹介
意見感想
プロフィール

イトウのペア2007

回帰録2007−2      回帰録2007−4

聖地本営、その本線を上り詰めた水源に回帰してきたイトウのペア。雪代水で勢い溢れる中流域をなぞって進むと、目的地を目指す雄が、あのど派手な婚姻色を輝かせて突っ走っている姿が見える。海からそこまでの通過経路には一切、遡上を妨げる建造物はない。

イトウが自然回帰する源へ来る都度、思うのはいつも同じ、道路がなく原生の森が今も残されていたなら、凄い大きなペアが見れただろうになあ・・・ここで1m10をはるかに超えるものを確認したのは2001年を最後に、あれ以来から見ていない。この種が生きる舞台の現実はいったいどうなっているんだろうか?

近年、民間で運営される保護団体が生息の痕跡のある各地域で次々旗揚げされ、独自の方針とあらゆる催しを開催、研究者などが講演し参加者に訴えている。盛んに旗揚げされる以前は、私も各地で同様の団体が現れることを願っていましたが、本来、国家の財産であるこれを、それも在来貴重資源なるを民が主導し保護を訴えるなど、国として情けないことではないか。

食べて美味しくない、効率的に大量生産できない、経済的に利益を生まなければ価値がないのか?それは違う、世の中には換金してはいけない美を持つ財産があることを国が認め率先し対策、資源を確保しなければならなく、これに従事する者は報酬を当てにせず忠誠心を持って国家、民の為に誠心誠意尽くさなければならない。

何が貴重で大切だと判断できる見極めは平凡な価値観を持つ凡人では国の財産を管理することはできません。ましてや給料を貰うための利益を当てにしたサラリーマンが政治をやってはいけないし、私たちがそれを許してはいけない。そして、地域ブランドを確立する目的や、馴れ合いの仲間たちと顔合わせする学閥など派閥の幅をきかせたサークル活動では、対立する幅広い民の根底にある意識には聞こえず届かない。

それと、最近では何でも先生だの研究者らを引っ張り出しては講演の席に立たせるが、活動する本人、会員たちが前面で活躍しなければ誰がその志だという意に耳を傾けるだろうか?実際のところ実践で活躍するイトウ専門の研究者と認められる方は、当サイトの書籍文献紹介で記載する論文や雑誌の中で登場する歴代の研究者3人が分野の人達に信頼され現在でも支持されているだけしか存在しない。

イトウなど野生動物を研究しようとする時に重要なのは、何処をフィールドに選択するかで大きな差がでるはずです。それによって仮説が生まれテーマが定まる。例えば、このイトウが自然回帰している痕跡を調査するとなれば、一つの水系、同じ箇所細部の隅々を最低で5年、7年間は継続し調べなければ繁殖の痕跡を拾い取ることはできないんです。たった一度や2〜3年の調査で確認できなかったと報告することは素人が述べることだ。それだけこのイトウの後を追う事は簡単ではなく、数少ない研究者だけで十分な調査をすることは極めて困難で、その労力、資金も安くは無く時間にも限りがある。だから、それぞれ自分達で精力的にやっていかなければならない。

釧路湿原国立公園に至るまでに活躍した人達を思い出したい。地元の方、自分達で調査したんです。その熱意と努力が国を動かしたんです。勿論、現在も自分達の力で活動し調査をしている団体はありますが、実際のところ多くの団体は研究者頼みで繁殖の実態すら網羅できておらず、大衆にはそれほど重い事態だと受け止められていない。志があるなら先生頼みを楯にせず思い直し、上と下を気にせず自分達の力で並行に動き訴えて欲しい・・・

それから、技術の発展に伴い小型の発信機が開発されているが、これを開発した技術者が評価されるだけで、金次第では誰でも利用できる。私も前から有ったらいいなと思っていた。それでも、生態や習性でさえ、まだまだ知られていないことがあるので、幻に問いかける道のりは長い・・・

遡行途中、所々で羆の痕跡を目の当たりにしては立ち止まり、鳴らし忘れた鈴をザックのポケットから取り出し辺りを見渡す。そして、再び思い直しては水源を目指す。流路を覆い被せる笹のトンネルはここでも目立ち、通過する為に何度も泳がされた。一帯の木々には新芽はまだでていない、行者ニンニクもこれからといったもので、エゾサンショウウオもまだ卵を産んでいない。いつもと変わらない光景は所々の湿原に顔を出すザゼンソウ、水芭蕉にコバイケソウとエゾノリュウキンカ。高台から聞こえるのはクマゲラが口ばしを打ち付ける音と聞きなれた鶯の声。長い春はまだ続きそうだ・・・

こんな場所でも産卵するんです。今年の特徴の一つとしては、残雪があまりにも少なく、雪解け増水の助けによって起き上がるはずである水源の笹が川面を覆い被したまま流路を隠していた箇所が目立ったこと。別な意味では、それが良かったかもしれない・・・

コウモリも見れました。敬一さん所有の山林で撮影、ナラの木のちょっとした隙間に入り込み寒さを凌いでいた。この時の気温は5℃、かなり寒そうでした・・・来年はエゾモモンガと巣穴を見せて頂くことになっているので感謝したい・・・。

回帰録2007−2      回帰録2007−4

      イトウと岩魚2足のわらじ   北海道のイトウと岩魚     北海道のイトウ   

     更新履歴   プロフィール     書籍文献紹介
        人物紹介