イトウ08・回帰録

イトウと岩魚2足のわらじ

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08回帰 P2

イトウ

黙々と巨体を躍震させ床を掘り下げる雌。何をそんなに急いでいるのか・・・

この日の為に今日まで生きていると言ったら大袈裟になるかもしれない、今年のように残雪が早くに消え雨も降らず気温が高い春開幕は10日〜2週間ほど早く感じられる。イトウの観察を始めたばかりの駆け出し当初では、雪解けに合わせて一ヶ月間に毎週、3日おきといった間隔で現地に行くといった下見の繰り返しをした事を想い出すと・良い日、同じ春は2度と巡り会えないことは自分の人生に置き換えても然り、力強いイトウとの巡り会わせには2001年以降、直面できずにいる。周辺環境が安定している聖地では、産卵で回帰してくるタイミングは現在でも一日とズレることなく行われている正確さを今回も目の当たりにすると、状況は1999年以来の条件と重なるのは確信していたので、予定日通りに床が掘られ、いいとこ初日から5日間と見ていたが、前日まで労働を続け怠慢なことに荷物の整理やら必要な買出しまでをも出発当日に残す始末、札幌を出発したのがAM8:00時過ぎ、きょうまで体力を温存するどころか疲労?したまま車のシートにクタりと座り目的地を目指した。始めに入る水系は昨年から計画している日本海側から探ることになる。

桜が開花?これはなんと早いことか、現地へ向かう道中、海岸線をどこまで進めど車窓から見える山腹の枯れた一面の中にピンク色が目に飛び込んでくるのは千島サクラか、こんな年は滅多にない。まず最初に向かう目的地はとある国有地が管理する山中に源を持つ領域で、今回はどうしてか正規な手続きを経て事前に入ることになっているが、当日一日だけという期限付き、そういえば暫定税率にも期限があったはずなのにまた道路に税が使われる?そうなると困るんだよなあ・・・造ったらつくったで維持管理するためにも税が使われる。実は一番問題なのがこれで、本種を保護、規制も必要ながら無関心層の大衆の1人ひとりの納税者たち、その意識に大きな力が持たれていること、何をされても’しょうがない’仕方がない’となにも感じない人は自分の収入の全てを納税してもらいたいもんだ・・・

一日目。ドライスーツを着込み重たいカメラ機材を背負って目的の川を流れに沿って進む。これまで記録しているポイント、たった50mほどの区間で4ペアを見つけた。正直、環境が安定していない日本海側で最も早く産卵が行われている記録は3月29日ということから、今回は姿を見ることはできないと諦めていた。床はまだ消えていないはずだから、産まれた床の数でも拾って記録しようか?なんて考え姿を見ることは諦めていた。ところが来ていること多いこと、流れに横たわる枯れた大木、河畔を覆い隠すように密集する笹と大きな木の側では大きな水飛沫をたてながら大きな雌が掘りを起こす音が聞こえてくる。そして、雄の婚姻色はオレンジ色なのはここならではだ。そんな光景は毎年、なんども見ていながら見惚れてしまう。

既に平水へと戻り透明度も悪い。現地に到着した時点で午後3時をまわっていたので残り日没まで3時間もない。初日だしょ日、これだけ絶好なタイミングに巡り会えたんだから岸辺に胡坐をかいてのんびり観察させてもらうか、一日目だからと自分に言い聞かせながらかっとうもするが、物事なんでもチャンスは一度しかない、イトウが専門で写真は二の次であるにせよ、その時のちゃんすは写真だということを思い正し取り付きを始めるがその間に日没と共にこの日が終わった。あとは明日の巡業地は平成の聖地を目指す・・・

08回帰 P2