世界自然遺産(知床半島)P2

イトウと岩魚2足のわらじ

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東の果ての秘境2008年(知床)     世界自然遺産(知床半島)P3

聞いていた通りカヤックの収納ボックスには荷物があまり入らない。でも、全ての食糧からなんやらを全て詰め込み足元にはビールを転がす。

初日の予定はカパルワタラ=アウンモイ漁港の番屋前でテントを張るか、昨年と同じ場所レタラワタラの廃屋前に上陸するか。ルシャを過ぎてからは風もなく波もない穏やかな曇り空で釣りを楽しみながらのんびりPM3:00、問題の漁港目前にある海鳥の岩に到着し、ここから30分ほどかかる観音岩を目指す。廃屋が目視できる地点に到達したとき漁師?さんかな、はて、こんな所で何をしてるもんだか、そうか、廃屋から少し離れた箇所に定置を固定するロープが張られていたから仕事か?よし・・・いっそのこといつもと同じ場所に上陸してテントを張ろうか、その前にカラフトが集まる沢の河口に上陸して釣りをし、時間があれば潜ってオショロコマの顔でも拝むとするか。

そうこうするうちに、その漁船がこちらに向かってきた。乗っているのは一人、最初に交わした言葉は、ここに上陸するのは’ヤバい’ですよ!やばい?と言うので、地元の方、漁師さんですかと尋ねると、いや、調査員ですと・・・

去年の出来事を思い出すように、上陸して早々ヒグマが出迎えてくれた?ので、単独行でもあるから行動は慎重にしようと思っていたところ、今年は縄張りを主張する新たな熊が居付いてしまったのか、調査員の話によれば、先ほどでは海に飛び込んでまで向かってきたという。人にですか、だから文吉に上陸するのが賢明だというので、じゃあ、カパルワタラはどうですか?・・・ん〜番屋に鍵はかかっておらず数日間は誰もいないけど、あそこも海鳥の巣を狙いに頻繁にクマが出ているし、文吉も出るんだよなあ・・・そうなるとどちらに上陸しても危険度は変わりないのでアウンモイしかない。そこで調査員と一度離れて、カラフトが集まる沢の河口に行き竿を振っていると、また、その調査員と二人がやってきた。

向って見える二つの岩礁まで波打ち際から50mほど、飛び込んで襲ってきたとき、あそこまで一瞬でしたよ・・ほんとにヤバいですよ!釣りたい気持ちはわかるけど・・・どうのと2人で話す会話が聞こえて事の重大さに気を取り直すのと、横でくちゃくちゃとうるさいな?と思いつつ、静かにカヤックを後退させると、それならクマの方が早いよ・・・残念だけどこの一枚のピンボケした写真だけでPM4:00になった時点でカパルワタラへ戻る。

予報通り、それからはどしゃ降りの雨、ずぶ濡れになってここアウンモイ漁港=カパルワタラに上陸しカヤックを安全位置まで引きずり上げスプレースカーフを脱ぎ、首からぶら下げているカメラを取り出し、2年ぶりに見る番屋とそこから半島を望む絶景を目に焼きつけ、しみじみ来たぞ!やっときた。そして、沢山の海鳥が巣をつくる離れの岩を見上げるとカモメの鳴き声が斜面の岸壁に反響し、独特な野生の雰囲気が漂っている。そして、ふと、その海鳥が集まる岩の下、自分が立っている地点から25mほど先に目をやると景色に同化していた”クマ”がすぐ目の前に居ることに気が付き心臓が破裂しそうなほど驚いた!

ヤバい!かどうかはその時点で分かっていたが、鼻先を地面に付けながらゆっくり、こちらへ向かって歩いてくる!静かにクマの方を見ながら番屋入口まで20mほどまで長かった?重いスライドドアを開け’ごめんくださ〜い’と声をかけると同時にドアを閉め外を見るとクマは番屋横に立て掛けている木のハシゴは使わず高さ3mほどの壁をよじ登り姿を消した。何度か誰かいないか声を出してはみたが、やはり留守なようだ。

調査員が言っていた”ヤバい”は本当だった!2年前、テントを張らせてもらった入口前のスペースには漁船が置かれていたし、いきなりクマを目にしては外で寝る気にはなれない。正直、岸壁に囲まれたこの漁港にクマは来れないと思っていたが、ここ知床には来れない場所はないということが解った。お〜い!と声を出しながら再び外に出て辺りを見渡しながらカヤックに戻り、着替え食糧などを取りに行き、大変申し訳ないが居間で一夜を過ごさせていただく。

長い夜の始まり。ただ、ビールだけは20缶以上持ってきたので退屈することはなかった。居間の壁を見ると1996年・・ワンダーホーゲル部、2008年・・あっ今年も誰か来ているんだ、けっこういろんな人がきて感想を壁に書き残している。大変お世話になりましたといったぐあいに・・・漁師さんたちの着替えも天井から吊るされていることから真新しい生活感が窺える。なんだか主が留守の番屋に勝手に入るのは気がひけるが、居間の片隅に目をやると花火?というかが置かれている。頻繁にクマが出ているのは確かなようだ。

そして、PM11:00、バタンッ!という番屋の壁を叩くというか何かがぶつかる大きな音と同時にカモメが騒がしく鳴く。